2時間ドラマ
テレビドラマ > 2時間ドラマ
2時間ドラマ(にじかんドラマ)とは、日本におけるテレビドラマ放送の一形態である。一般にはゴールデンタイム・プライムタイムである21時から23時ごろまで(一部20時ごろから22時ごろまで)の2時間程度にわたって放送される、中高年層向けの単発ドラマを指す。内容はサスペンスドラマやミステリードラマが多く、基本的にはレギュラーの番組枠で放送される。
目次
1 概要
2 2時間ドラマ枠
2.1 現在
2.2 過去
3 脚注
概要
2時間ドラマとして描かれる作品の多くの当初が、冤罪となった人物の家族が無実を証明しようと奔走する話や、犯人を主人公とした話が多かった。後に弁護士や検事を主人公としたドラマが制作されるようになる。平成に入ってからは特定の刑事を主人公にした、「刑事ドラマ」の延長線上にある作品や、元刑事や普通の民間人が探偵活動に走るといった作品が主流となる。
日本においては、アメリカ合衆国のテレビ用長時間映画であるテレフィーチャーを意識したテレビ朝日系列の『土曜ワイド劇場』が先駆けとなり(もっとも、同番組は開始当初は90分枠だった)、1980年代以降、民間放送各局が競って制作を開始した。基本的に1回の放送でストーリーは完結するが、同じ登場人物と設定による人気シリーズとなった作品は多い。中高年の主婦層を中心とした固定ファンと視聴習慣を獲得しており、船越英一郎、片平なぎさ、山村紅葉ら2時間ドラマを中心に活躍する俳優を生み出した。また、実質放映時間90分強(90分枠の場合は70分強)で1話完結という形式は劇場映画に近似しており、特に初期はかつて映画界でプログラムピクチャーを多く手掛けた人材が監督や脚本家として歓迎された。
主な視聴者層が中高年の主婦であることから、児童や生徒が家庭内にいない平日の昼間に再放送されることも少なくない。ただし、劇中で現在好ましくない差別用語が使用されていたり、過激な性描写・暴力表現がある1970 - 1980年代に制作された作品の再放送は敬遠される傾向にある(それらの時代の作品は一部地上波独立UHF局及び有料のCS放送等で放映されている)。現在、主に1990 - 2000年代に放送された人気シリーズの作品か、2000年代以降に放送された単発の作品が主流である。まれに80年代後半(昭和60年 - 平成元年)の作品を放送することもある。それでも、再放送も児童生徒が見ていることも配慮し、目に触れやすい平日の昼・夕方から深夜にシフトしたり、情報ワイド番組の強化により廃止している。また、1時間物の連続ドラマ(2話連続)に切り替えたり、バラエティ番組の再放送やテレビアニメもしくは情報番組の放送に切り替える局も出てきている。
日曜日のプライムタイムに2時間ドラマのレギュラー放送枠が設けられた例はないが、テレビ東京とBSジャパン(現・BSテレビ東京)(2000年12月開局)が共同で制作していたサスペンス作品が、BSジャパンの日曜21時枠で定時放送(開始から約7年間は対地上波比でBSが3日先行)されていた時期もある。日曜日のプライムタイムには『東芝日曜劇場』や『花王名人劇場』など1時間の単発ドラマ枠が主流であった(ただし東芝日曜劇場については、当時低迷していた『月曜ドラマスペシャル』との枠交換として2時間ドラマ枠化の計画はあったが、結局実現しなかった)。
NHKがこのようなサスペンスやミステリー系2時間ドラマをレギュラー枠で制作・放送した例も、現在は放送されてない。ただし、土曜ドラマなどの断続枠、または単発枠などでは松本清張シリーズ、サスペンスシリーズ、SFシリーズなどと銘打って盛んに推理・サスペンス・SFを取り上げている。
他のテレビドラマに比べ撮影終了から放送日の間隔が長いことが多く、1年以上を要することもある。そのため、出演者が数年前に亡くなっているのに出演していたり[1]作中での季節(撮影中の季節)と放送日の季節が合わないこともある。このほか誘拐や災害など現実の事件とシンクロしてしまったり、出演者の不祥事、編成上の都合(前述の災害における報道特別番組やスポーツ中継など)で放送の時期を逸し、撮影済みにもかかわらずお蔵入りになることもある[2]。また主演級の俳優が亡くなった直後は追悼企画として撮影済みで放送待ちの主演最新作を繰り上げて放送[3]したり、別の作品を差し替えてアンコール放送する場合もある。
1990年代半ばまでは、週に8本の枠がある活況を示していたが、2005年以降はバラエティ、映画を含めた総合特番枠へのリニューアル、あるいは2時間ドラマ枠の廃止などが進んでいる。2005年9月に『火曜サスペンス劇場』(日本テレビ)が終了。その後も各局が追随し、フジテレビは『金曜プレステージ』以降は不定期放送に転換。2017年3月にはテレビ東京が『水曜エンタ』終了によりレギュラー放送から撤退。同月にテレビ朝日も『土曜プライム』枠を廃止し、以降は『日曜ワイド』→『日曜プライム』枠での放送となる。また、これらに伴い各局とも2時間ドラマの制作本数が漸減している。
2019年3月をもって、通常編成での2時間サスペンスドラマ専用枠であったTBSテレビの『月曜名作劇場』が終了[4]。地上波民放のゴールデンタイムから2時間ドラマ専用枠が消滅する。
枠の減少については連続ドラマで事件解決ものが増え同ジャンルの希少価値が減って視聴者も目が肥えて他作品との類似や犯人が早めにわかるなどの指摘にテレビ局が悩まされたことや局も1時間ドラマの製作を優先、2時間ドラマ発の作品は連ドラ化されることめあるため登竜門としての立ち位置に格下げ[5]、視聴者層が50代以上が中心なため広告主は消費行動がより多いその下の世代の視聴者が中心の連続ドラマに出稿する方が価値があるとみる動きや[6]、視聴者がリアルタイムで午後11時まで見るより録画で見るようになったことやパソコンやスマートフォンをやりながら見ることが増え1時間ドラマも集中して見てもらえない時代になった、自主規制で性的なシーンや残虐シーンを描けなくなった[7]、製作期間が長く出演者のギャラも高く視聴率も10パーセントを超えればいい方でコスト面の問題[8]、黄金期を支えた松本清張、山村美紗、森村誠一、西村京太郎のようなミステリー作家の発掘、ミステリーの帝王、ミステリーの女王と呼ばれた船越英一郎、片平なぎさなどの後継が育成されなかったこと、各局全体で枠を守ろうとするスタンスの必要性が指摘されている[9][10]。
2時間ドラマ枠
現在
日曜プライム(テレビ朝日)
- 2018年4月8日開始。純粋な2時間ドラマ枠ではなく、バラエティー等の放送週を含む総合単発枠。
過去
日本テレビ系列
火曜サスペンス劇場→DRAMA COMPLEX→火曜ドラマゴールド
- 水曜グランドロマン
木曜ゴールデンドラマ→ドラマシティ(読売テレビ制作)
テレビ朝日系列
- ゴールデンワイド劇場
月曜ワイド劇場(テレビ宮崎で放送されていた「土曜ワイド劇場→土曜プライム・土曜ワイド劇場」の時差放送「月曜ワイド劇場→月曜プライム・月曜ワイド劇場」とは別番組)
火曜スーパーワイド→火曜ミステリー劇場(テレビ朝日と朝日放送が交互で制作を担当)- ミステリースペシャル
土曜ワイド劇場(土曜プライムの一企画扱い降格前。2時間枠に移行後、原則月1回朝日放送が制作を担当)→土曜プライム(原則月1回朝日放送が制作を担当)
日曜ワイド(ゴールデンタイム・プライムタイムでの放送ではなく、昼前の放送となっている。新作を毎週放送する枠ではなく、旧作も織り交ぜて放送する枠である。)
日曜エンタ(不定期にドラマを放送)
TBS系列
月曜ドラマスペシャル→月曜ミステリー劇場→月曜ゴールデン→月曜名作劇場
- 恋はミステリー劇場
- 水曜ドラマスペシャル
- 水曜プレミア
- ザ・サスペンス
- 土曜ドラマスペシャル→ドラマチック22
テレビ東京系列
月曜・女のサスペンス2時間スペシャル:3ヶ月-6ヵ月に1回の頻度で通常回より放送時間が拡大された作品(サスペンスドラマ)を放送。
日本名作ドラマ(第2期):前後2篇に分割された作品を2週に渡って放送(1時間×2回)していた同名の連続ドラマ枠(第1期)の終了(→定時のドラマ枠としては一旦消滅)直後に設けられた不定期の2時間ドラマシリーズ。
水曜女と愛とミステリー→水曜ミステリー9→水曜シアター9→(1年間中断)→水曜ミステリー9→水曜エンタ
フジテレビ系列
- 月曜ドラマランド
- 木曜ファミリーワイド
- 木曜ドラマストリート
金曜ファミリーワイド→金曜女のドラマスペシャル→ザ・ドラマチックナイト→男と女のミステリー→金曜ドラマシアター →金曜エンタテイメント→金曜プレステージ→赤と黒のゲキジョー→金曜プレミアム(現在、不定期放送)
プレミアムステージ→土曜プレミアム
- ミステリードラマスペシャル(現在、不定期放送)
脚注
^ 鈴木ヒロミツは2007年3月14日に死去したが2008年2月8日に放送された『新祇園芸妓シリーズ3 京都花嫁衣装殺人事件』や、2009年5月23日に放送された『女警察署長』に出演している。
^ 『銀色の恋文』は1994年に放送予定だったが編成上の都合で放送されず、主演の森繁久彌が死去した際に2009年11月14日に関東ローカルのみで放送された。
^ 藤田まこと主演の『京都殺人案内』や地井武男主演の『大崎郁三の事件散歩』が最たる例
^ “TBS2時間ドラマ枠「月曜名作劇場」3月で終了”. 日刊スポーツ (2019年1月31日). 2019年1月31日閲覧。
^ “2時間ドラマが絶滅の危機 事件解決モノ連ドラ急増も影響か(3)”. NEWSポストセブン (2017年1月26日). 2019年3月1日閲覧。
^ “2時間ドラマ栄枯盛衰 視聴率低迷、消える放送枠 シニア層狙いBSへ”. 産経新聞 (2017年5月30日). 2019年3月1日閲覧。
^ “2時間ドラマが絶滅の危機 事件解決モノ連ドラ急増も影響か(4)”. NEWSポストセブン (2017年1月26日). 2019年3月1日閲覧。
^ “2時間ドラマが消える理由…最後の砦のTBSもついに終了”. 女性自身 (2019年1月31日). 2019年3月1日閲覧。
^ “2時間ドラマが絶滅の危機 事件解決モノ連ドラ急増も影響か(5)”. NEWSポストセブン (2017年1月26日). 2019年3月1日閲覧。
^ “崖っぷち2時間ドラマ、帝王船越英一郎の直訴が熱い”. 日刊スポーツ (2017年5月15日). 2019年3月1日閲覧。