バイアスロン
バイアスロン(biathlon)とは、二種競技のこと。ラテン語で「2」を意味する接頭辞bi-にathlon(競技)を合成した造語。一般にはクロスカントリースキーと、ライフル射撃を組み合わせた冬の競技が有名だが、ランニング・自転車・ランニングを通しで行う夏の「バイアスロン」(デュアスロン)も存在する。
目次
1 歴史
2 解説
2.1 日本でのバイアスロン
3 種目
4 競技規定
5 主要大会
6 類似種目
7 著名なバイアスロン選手
8 関連項目
9 脚注
10 外部リンク
歴史
バイアスロンの原型は、スキーで野を駆け回り、銃で獲物を撃つ冬の狩猟であり、これが後に雪中戦や森林警備隊の技術として用いられるようになった。競技としては、18世紀後半にスウェーデンとノルウェーの軍人が行ったのが始まりといわれている。
その後1861年になって、ノルウェーで、それまでの狩猟や戦闘技術として用いていたことを、スポーツとして行い、民間レベルの国家防衛力向上のために世界初のスキークラブ、トリンシルライフル・スキークラブが設立された。
競技としては、1924年シャモニー冬季オリンピックで軍事偵察競技(ミリタリーパトロール (military patrol) )というスキー登山も含めた競技が公開競技として行われた。その後、オリンピックで3回行われた以降は実施されていない。
その後のオリンピックで、男子は1960年スコーバレー冬季オリンピック、女子は1992年アルベールビル冬季オリンピックから正式種目となった。現在に至るまで、多くのルール改正があったが、一番大きなものは1976年に30口径ライフル弾を使用する大口径銃(射距離150m)から22口径競技用ライフル弾を使用する小口径銃(射距離50m)に変わったことである。
解説
競技種目は、個人(インディヴィデュアル)、個人追い抜き(パシュート)、短距離(スプリント)、リレー、ミックス(男女混合)リレー、マススタート(一斉スタート)、スーパースプリントクオリフィケーションファイナルの7種から成る。
ライフル射撃は射撃位置と的の間が50mあり、スキーで走り込んでから射撃を行う。この際、心拍、呼吸ともに乱れた中での精密射撃が求められる。2010年バンクーバー冬季オリンピックでは、「マタギの孫娘」という冬季戦技教育隊の鈴木芙由子が競技歴3年でありながら出場したことからも、射撃の才能が必須の競技といえるが、オーレ・アイナル・ビョルンダーレンのように、高くない射撃の得点をスキーで挽回する選手もおり、本人の特質にあったやり方が重要である。
銃を扱うことから、世界的に見ても競技者は軍隊、警察、国境警備隊等に所属している競技者が多いが、ヨーロッパにおいては民間人や、賞金レースで稼ぐプロの競技者も多い。特に発祥とされる北欧諸国では、シーズン中は毎週のようにレースがあるなど環境が整っているため、競技者の量、質共に充実している。
なお、バイアスロンは国際スキー連盟には属さず、オーストリアに本部を置く国際バイアスロン連合という独自の組織を持つ。
日本でのバイアスロン
銃刀法の問題もあって、日本の競技者は自衛官である自衛隊体育学校冬季特別体育教育室、陸上自衛隊冬季戦技教育隊及び普通科連隊・特科連隊・戦車部隊等に所属する訓練隊の隊員がほとんどであるが、少数の民間人競技者もいる[1]。
1998年長野冬季オリンピックで冬季戦技教育隊の高橋涼子が6位入賞しているが、それ以降はこの成績を越えるものはいない。
国際的には競技用ライフルを使用するが、日本国内では自衛隊のライフル(64式小銃、89式小銃)を使用する大会がある。競技ルール的には「一般銃」と分類され競技用ライフル選手とは別に競技が行われる。選手は自衛官であるが競技人口は競技用ライフルの選手と比べ多い。大会には陸上自衛隊の北部方面隊および東北方面隊所属の普通科連隊、特科連隊および海上自衛隊等のチームが参加している。
競技用ライフルの弾倉には5発が装填でき、各射撃でも5発を射撃する。しかし、リレー、ミックスリレー、スーパースプリントクオリフィケイションファイナルでは予備弾3発の使用が許されている。そのため、ライフル本体に弾倉を4個、予備弾数発を収納できるような構造になっている。「一般銃」においては、安全管理上の問題から、弾倉を携行せずにスキー滑走となる。
日本国内の競技者も全日本スキー連盟には属さず、日本バイアスロン連盟に所属している。
種目
個人(インディヴィデュアル):選手は30秒間隔で出発。男子20km、女子15kmで、4km(女子は3km)を5周し、周回ごとに伏射、立射、伏射、立射の順で4回の射撃(1回につき標的5個に対して5発発射)を行い、外した弾1発につき走行タイムに1分が加算される。
スプリント:選手は30秒間隔で出発。男子10km、女子7.5kmで、3.3km(女子は2.5km)を3周し、周回ごとに伏射、立射の順で2回の射撃を行い、外した弾1発につきペナルティループ(150m)を1周する。
個人追い抜き(パシュート):男子12.5km、女子10kmで、2.5km(女子は2km)を5周し、周回ごとに伏射、伏射、立射、立射の順で4回の射撃を行い、外した弾1発につきペナルティループを1周する。先に行ったスプリント競技のゴール順にスタートし、スタートのタイム差はスプリントのゴールのタイム差による。
例えば、スプリントで1位から5秒遅れの2位でゴールした選手は、パシュートではトップから5秒遅れでスタートし、前方の選手を追い抜かさなくては勝利できない。スプリント3位の選手が2位から10秒遅れでゴールしていれば、パシュートのスタートは2番目の選手の10秒後となる。
マススタート:全選手が一斉にスタートする方式であり、スタート直後は選手間の接触、転倒が多く見られる。男子15km、女子12.5kmで、3km(女子は2.5km)を5周し、周回ごとに伏射、伏射、立射、立射の順で4回の射撃を行い、外した弾1発につきペナルティループを1周する。
リレー:男子は7.5kmずつ、女子は6kmずつを4人でリレーする。1人2.5km(女子は2km)を3周し、周回ごとに伏射、立射の順で2回の射撃を行う。外した場合は予備弾として各射撃ごとに3発までの使用が許されている(つまり合計8発の射撃が可能である)が、それでも残った標的の数1つにつきペナルティループを1周する。
ミックスリレー:男子2名、女子2名の4名混合で行い、男子7.5km、女子6kmずつを走行する。女子、女子、男子、男子の順に走行し、競技方式はリレーと同様である。
スーパースプリントクオリフィケイションファイナル:予選は男子3.6km、女子2.4kmで、1.2km(女子は0.8km)を3周し、周回ごとに伏射、立射の順で2回の射撃を行う。決勝は男子6km、女子4kmで、1.2km(女子は0.8km)を5周し、周回ごとに伏射、伏射、立射、立射の順で4回の射撃を行う。射撃は予備弾3発の使用が許されているが、ペナルティーが出た時点で失格となる。非常にエキサイティングな種目ではあるが、オリンピックでは採用されていない。
選手の射撃位置は、個人種目は特に制限がなく、リレーやマススタートにおける最初の射撃位置は指定されており、それ以外の場合は先着順で決定する。
順位は、スプリントは滑走所要タイム、個人は滑走所要タイム+ペナルティタイムの総合タイムで決定し、それ以外の種目は着順で決まる。なお、選手どうしの接触・転倒と射撃エリアの渋滯を防止するために、世界選手権などでは、個人追い抜きやマススタートで決勝進出人数の制限が存在する(個人追い抜きはスプリント60位以内、マススタートは予選30位以内で決勝進出)。
競技規定
- スキー:最短が競技者の身長、最長で230cm
- 射座から標的までの距離:50m
- 標的:伏射が直径45mm、立射が直径115mmの的5つ
ペナルティループ:1周150m- ライフル:22口径(5.6mm)のスモールボアライフル、重量約3.5〜5kg
主要大会
- オリンピックバイアスロン競技
- バイアスロン世界選手権
- バイアスロン・ワールドカップ
類似種目
基本的には冬季競技だが、スキーをローラースキーに換えた「ローラースキーバイアスロン」やランニングによる「ランニングバイアスロン」が、夏期のトレーニングだけでなく個別の競技として行われている。またヨーロッパではメジャーな競技であるため、自転車を使う「マウンテンバイクバイアスロン」、オリエンテーリングと組み合わせた「オリエンテーリングバイアスロン」、伝統的なスタイルを踏襲しスノーシューと先込め式銃を使用する「プリミティブバイアスロン」など多数の変形競技が存在する。
中でも銃ではなくアーチェリーを使う「アーチェリーバイアスロン」は、世界的に競技人口の多いアーチェリーと組み合わせることで、既存のアーチェリー選手だけでなく、銃規制が厳しい国の人間にとってもハードルが低くなるため、近年ではヨーロッパ以外でも広まりを見せており、日本においても少数ながら競技選手や競技会が存在する。
著名なバイアスロン選手
- オーレ・アイナル・ビョルンダーレン
- アナスタシア・クズミナ
- 長田弘幸
- 新田佳浩
- 久保恒造
- 太田渉子
- 井口深雪
- 立崎芙由子
関連項目
- 北海道大演習場
- ライフル射撃
- トライアスロン
- モッティ戦術
- デュアスロン
- 冬季戦技教育隊
- 訓練隊 (自衛隊)
戦車バイアスロン - 戦車を使うバイアスロン
脚注
^ 主にスポーツ競技に力を入れている学校出身者の他に、元自衛官や自衛官の身内を持つ者などが民間人競技者として登録されている
外部リンク
- バイアスロンとは? 荒井監督のパラリンピック競技ノルディックスキー講座
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