MOX燃料




MOX燃料(モックスねんりょう)とは混合酸化物燃料の略称であり、原子炉の使用済み核燃料中に1%程度含まれるプルトニウムを再処理により取り出し、二酸化プルトニウム(PuO2)と二酸化ウラン(UO2)とを混ぜてプルトニウム濃度を4-9%に高めた核燃料である[1]。主として高速増殖炉の燃料に用いられるが、既存の軽水炉用燃料ペレットと同一の形状に加工し、適切な核設計を行ったうえで適切な位置に配置することにより、軽水炉のウラン燃料の代替として用いることができる。これをプルサーマル利用と呼ぶ。MOXとは(Mixed OXide 「混合された酸化物」の意)の頭文字を採ったものである。






目次






  • 1 利点


  • 2 問題点


    • 2.1 作業員への被ばくの危険性


    • 2.2 再処理の困難


    • 2.3 管理の問題




  • 3 搭載実施状況


    • 3.1 新型転換炉への搭載


    • 3.2 高速増殖炉への搭載


    • 3.3 試験運転が実施された軽水炉


    • 3.4 本格運転が実施された軽水炉


    • 3.5 搭載が計画されている軽水炉




  • 4 プルサーマル計画の遍歴


  • 5 関連用語


  • 6 参考文献


  • 7 外部リンク


  • 8 脚注





利点


プルサーマル用に加工することにより、既存の原子力発電所にそのまま使用でき、普通のウラン燃料と比べ高出力である。クリープ速度が速いため、PCMI(核燃料と被覆管の間の相互作用)の影響も緩和される。使用済み核燃料から再処理・群分離でプルトニウムを含む超長半減期核種を分別抽出し、MOX燃料として燃焼させてしまえば比較的半減期の短い核分裂生成物に変換できる。もしプルトニウムを抽出せず埋没処分をするワンススルーにするならば、使用済み核燃料は数万年にわたる管理が必要となる。プルトニウムを消滅させつつエネルギーを取り出す手段として、プルトニウムと劣化ウランの混合焼結燃料が考案された。また、ロシアでは解体した核兵器から取り出したプルトニウムをMOX燃料に加工して高速炉で燃焼させることで処分しており、日本も協力している[2]



問題点


東京電力が、燃料抽出を免許されていないベルゴニュクレエールに製造を依頼して問題になった。



作業員への被ばくの危険性


新品のウラン燃料に比べ放射能が強い(特にアルファ線、中性子線が著しく強い)ため、燃料の製造については遠隔操作化を行い、作業員の被曝防止に十分配慮して行う必要がある。



再処理の困難


二酸化ウラン中に二酸化プルトニウムを混ぜることによって燃料体の融点が上がるが、一方で熱伝導率が下がるため燃料温度が上がりやすくなり、炉心溶融の危険性が高くなる(酸化物燃料ではなくプルトニウム・ウラン窒化物燃料にすれば熱伝導率はウラン酸化物燃料と比べても大幅に改善する)。また、核分裂生成物に占める貴金属の割合が多くなり、またプルトニウム自体もウランより硝酸に溶解しにくいため、再処理が難しくなる。



管理の問題


ガス状核分裂生成物(キセノン、クリプトン等)とアルファ粒子(ヘリウム原子核)の放出が多いため、燃料棒内の圧力が高くなる。性質の違うウランとプルトニウムをできる限り均一に混ぜるべきであるが、どうしてもプルトニウムスポット(プルトニウム濃度が高い部分)が生じてしまう。国は基準を設けて制限しているが、使用するペレット自体を検査して確認することはできない。



搭載実施状況




新型転換炉への搭載



  • ふげん(実験を終了し、現在は廃炉)


高速増殖炉への搭載




  • 常陽(実験炉)


  • もんじゅ(原型炉)



試験運転が実施された軽水炉


1986年-1995年にかけて、少数のMOX燃料を使用して、健全性を確認する試験運転が実施された。




  • 日本原子力発電(株)敦賀原子力発電所1号機


  • 関西電力(株)美浜原子力発電所1号機



本格運転が実施された軽水炉




  • 東京電力(株)福島第一原子力発電所3号機-2010年10月26日より営業運転[3]していたが、2011年3月11日発生の東北地方太平洋沖地震に伴い停止。爆発事故により廃炉決定。


  • 九州電力(株)玄海原子力発電所3号機 国内の軽水炉としては初めて装荷(2009年10月15日)。2010年12月に停止、点検中。


  • 中部電力(株)浜岡原子力発電所4号機(静岡県御前崎市)。


  • 四国電力(株)伊方原子力発電所3号機(愛媛県伊方町)。国内で2番目(2010年2月12日)に装荷完了。


  • 北海道電力(株)泊原子力発電所3号機


  • 関西電力(株)高浜原子力発電所3号機および4号機



搭載が計画されている軽水炉




  • 東北電力(株)女川原子力発電所3号機


  • 電源開発(株)大間原子力発電所。商業炉としては世界初となるフルMOX装荷が可能な炉心を計画している。



プルサーマル計画の遍歴


軽水炉で濃縮ウランの代わりにMOX燃料を使用するプルサーマル計画は、当初予定よりも十年以上遅れている。




関連用語




  • プルサーマル(軽水炉でMOXを使う)


  • 高速増殖炉(MOX燃料を使用する)

  • 新型転換炉

  • 軽水炉


  • マルクール原子力地区(MOX燃料製造)



参考文献


  • 小林圭二・西尾漠『プルトニウム発電の恐怖』創史社


外部リンク



  • Mixed oxide fuel (MOX) (英語) - Encyclopedia of Earth「MOX燃料」の項目。


脚注


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  1. ^ MOX燃料とは:日本原燃


  2. ^ 鈴木美寿,他 (2012年11月12日). “ロシア余剰核兵器解体プルトニウム処分協力 (pdf)”. JAEA-Review 2012-044. 日本原子力研究開発機構. p. 3. 2016年1月11日閲覧。


  3. ^ 福島第一原子力発電所3号機におけるプルサーマル開始について











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