自由貿易協定
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自由貿易協定(じゆうぼうえききょうてい、英: Free Trade Agreement[1][2]、FTA)は、2ヶ国以上の国・地域が関税、輸入割当など貿易制限的な措置を一定の期間内に撤廃・削減する協定である[3]。締結国・地域間の自由貿易および投資拡大を目的として関税/非関税障壁を取り払う[3]。北米自由貿易協定等の多国間協定と、2国間協定とがある[4]。
一方で経済連携協定(EPA)と呼ばれるものは、FTAに加えて、投資、政府調達、知的財産権、人の移動、ビジネス環境整備など広範囲な取り組みを含む協定であり、締約国間の貿易・投資の拡大を目指す協定である[3]。
目次
1 自由貿易協定の規定
1.1 FTAとEPAの違い
1.2 TAG
2 メリットとデメリット
3 自由貿易地域の一覧
4 東・東南アジア地域におけるFTA締結の動き
5 日本のFTA戦略
5.1 発効済みの協定(EPAを含む)
5.2 日本が締結手続きを完了したが未発効の協定(EPAを含む)
5.3 交渉中の協定(EPAを含む)
5.4 交渉延期中または中断中の協定(EPAを含む)
6 学者の見解
6.1 北米自由貿易協定
7 脚注・参考資料
8 関連項目
9 外部リンク
自由貿易協定の規定
- GATT(関税および貿易に関する一般協定)第24条
- GATS(サービスの貿易に関する一般協定)第5条
- WTOの「授権条項(enabling clause、1979年GATT決定)」(先進国が途上国に対し、他よりも低率な関税を適用することを認め、途上国間の自由貿易協定締結を容易にすることを認めるものであり、GATT第24条の厳格な要件は適用されない)
2018年4月末時点で、305の協定がWTO(世界貿易機関)に発効済みとして通報されている[5]。WTOに通報されたものは、経済連携協定(EPA)と呼ばれているものを含む。
FTAとEPAの違い
「自由貿易協定」(Free Trade Agreement、FTA)は、特定の国や地域とのあいだでかかる関税や企業への規制を取り払い、物品やサービスの流通を自由に行えるようにする取り決めのこと[6]。通商政策の基本ともいわれる[7]。
「経済連携協定」(Economic Partnership Agreement、EPA)は、物品やサービスの流通のみならず、人の移動、知的財産権の保護、投資、競争政策など様々な協力や幅広い分野での連携で、両国または地域間での親密な関係強化を目指す協定[6][7]。
地域間の貿易のルールづくりに関しては、過去世界貿易機関(WTO)を通した多国間交渉の形が取られていたが、多国間交渉を1つ1つこなすには多くの時間と労力が取られるため、WTOを補う地域間の新しい国際ルールとして、FTAやEPAが注目されている[6]。
日本は東南アジアやインドとの経済の連携協定を進めてきたように、FTAだけでなくEPAの締結を求めている[8]。その理由は、関税撤廃だけでなく、投資やサービス面でも、幅広い効果が生まれることを期待していることによる[8]。
ただし、日本政府の公式見解では「free trade agreement」について、国際的に確立した定義があるとは承知しておらず[9]としており、従ってEPA、FTAの相違についても国際的に確立した定義によるものは日本国政府としてはあるとはしていない。
TAG
2018年9月26日の日米共同声明[10]において、日米両国は「日米物品貿易協定(TAG)[11]について」交渉を開始すると発表した。これについて安倍総理は、記者会見において「今回の、日米の物品貿易に関するTAG交渉は、これまで日本が結んできた包括的なFTAとは、全く異なるもの」、「今回合意を致しましたTAG、これはFTAとは違いますが、しかし、正に物品貿易に関する交渉であります」と発言[12]しているが、TAGは、GATT第24条に定義する自由貿易協定そのものであり、サービス分野その他の分野を含まない物品貿易に限定した自由貿易協定ということになる。協定の性格は名称でなく、実質決まるものであり、「北米自由貿易協定」(North American Free Trade Agreement、NAFTA)の再交渉の結果として合意された協定は、「米国・メキシコ・カナダ協定」(United States-Mexico-Canada Agreement、USMCA)と「自由貿易」(Free Trade)を含まない名称となったが、これにより自由貿易協定でなくなったわけではない。
また、物品貿易協定(TAG)という用語は「日米共同声明に存在しない」との指摘がある[13]。共同声明は英語が正文[14]とされそこには"for a Japan-United States Trade Agreement on goods,as well as on other key areas including services, that can produce early achievements"とあり、日本の外務省の訳[10]は「日米物品貿易協定(TAG)について,また,他の重要な分野(サービスを含む)で早期に結果を生じ得るものについて」としている。しかし、在日米国大使館の訳文[15]では「早期に成果が生じる可能性のある物品、またサービスを含むその他重要分野における日米貿易協定の交渉」とあり、物品とサービスを含むその他重要分野が並列で日米貿易協定を修飾している。少なくともTAGという略語がないことはあきらかである。これについて、玉木雄一郎・国民民主党代表は、「ちょっと言葉を強く言えば捏造だ。あえて正しく英文を訳さずにTAG(物品貿易協定)という略語を創設し、FTA(自由貿易協定)ではないという国内向けの説明をするために、意図的に誤訳をして作られた捏造文書だと言っても良い」とコメントした[16]。
また、この協定の交渉開始について、トランプ大統領より米国議会へ通知[17]されているがこのなかで関税及び非関税障壁と明示している。
メリットとデメリット
自由貿易協定には、経済的利益のみならず、政治的利益が期待される。
経済的メリットとしては、自由貿易の促進拡大により、スケールメリットや、協定国間における投資拡大の効果も期待される[18]。また、地域間における競争促進によって、国内経済の活性化や、地域全体における効率的な産業の再配置が行われ、生産性向上のメリットも期待される。
政治的メリットとしては、協定国間の地域紛争や政治的軋轢の軽減や、地域間の信頼関係の熟成が期待され、また貿易上の問題点や労働力問題なども、各国が個々に対応するよりも協定地域間全体として対応をすることができる。
一方でデメリットも憂慮される。協定推進の立場の国や人々は、地域間における生産や開発の自由競争や合理化を前提にしていることが多く、自国に立地の優位性がない場合、相手国に産業や生産拠点が移転する可能性がある。このため、国内で競争力があまり強くない産業や生産品目が打撃を受けたり[19]、国内消費者が求める生産品の品質を満たせない製品が市場に氾濫するなど、生産者にとっても消費者にとってもデメリットが生じる可能性が存在する。国外から入ってきた製品が独特のニーズに応えられるかどうかは未知数であり、他の自由貿易協定(FTA)地域で起きたメリットと同じことが、また別の国家間で結ばれたFTAにおいても起こるとは限らず、むしろ国民が望まない方向へ経済的にも政治的にも進む可能性もある。
自由貿易地域の一覧
- 二国間自由貿易協定リスト
- List of multilateral free trade agreements
全ての関税同盟、貿易共同市場、経済同盟、関税通貨同盟及び経済通貨同盟もまた自由貿易地域を有するが、これらは各記事においてのみ記載される。
東・東南アジア地域におけるFTA締結の動き
東・東南アジア地域では授権条項に基づくバンコク協定などを除き、FTA締結の動きは遅れた。ASEAN諸国は、ASEAN自由貿易地域(AFTA)を1992年に締結し、段階的な貿易自由化を行い始めた。ASEAN域内での関税や非関税障壁(NTB)の引き下げを行い、貿易の自由化、それに伴う経済の活性化、発展を目的とするものである。しかし、東アジア諸国がFTA締結に取組始めるのは、1990年代末以降である。また、中国や台湾はそれぞれ、2001年、2002年までWTOにも加盟しておらず、WTO加盟国とのFTA締結はできない状況にあった。
この地域において、FTAに最も積極的なのは、シンガポールである。AFTAにおいても、提唱国のタイと並ぶ推進者であった。AFTAだけではなく、域外国とのFTA締結にも熱心であり、2000年11月にニュージーランドとの間でニュージーランド・シンガポール経済連携緊密化協定(ANZSCEP[20])に調印した。その後、日本、EFTA(2002年)、オーストラリア、アメリカ(2003年)、ヨルダン(2004年)、インド、太平洋4カ国(チリ、ニュージーランド、ブルネイ)FTA、韓国、パナマ、カタール(2005年)などとの間で締結済みである。
今日の東アジア経済統合において、ASEANは事実上中核的な位置を占めている。中国や日本、のちに韓国はASEAN諸国全体とのFTA(ASEAN+1FTA)をそれぞれ締結し、それをまとめたものをASEAN+3FTAとして事実上の東アジアFTAを構築するのが既定路線になっている。2002年に日本の小泉首相がASEAN+5構想を提唱し、オーストラリアやニュージーランドも含むべきだと主張したが、これもASEANを中心とする枠組み構築に沿ったものであった。オーストラリア、ニュージーランドはすでにANZCERTA[21]を締結し、このCER[22]とAFTAの間のFTA構想も交渉が行われている。
また、ASEANでは広域FTAの中核となるだけではなく、域内経済統合の深化を模索する動きもある。2003年に、第9回ASEAN首脳会議はASEAN経済共同体と他2分野における共同体の創設を目指す「第二ASEAN共和宣言(バリ・コンコード II)」を採択した[1]。ただし、このASEAN経済共同体はFTA+αとして議論されており、ヨーロッパにおける経済共同体 (EEC) やEC市場統合などと比較できるレベルのものではない。
日本のFTA戦略
日本は、1998年12月に、日韓自由貿易協定の効果等についてのシンクタンクによる韓国との共同研究を行い(2000年5月終了)、ついで日韓自由貿易協定ビジネス・フォーラム:2001年3月~2002年1月、日韓自由貿易協定共同研究会:2002年7月~2003年10月を経て2003年10月、日韓両国首脳は交渉開始に合意した。しかし、韓国とのFTA交渉は2004年11月の日韓自由貿易協定交渉第6回会合を最後に中断となった[23]その間に日本はシンガポールとの間で交渉を進め、2002年に日本初の経済連携協定(日本・シンガポール新時代経済連携協定)が発効されるに至った。その後、ASEAN諸国それぞれとの二国間交渉に乗り出し、またメキシコとも経済連携協定を締結した。2007年4月に開始された日本・オーストラリア経済連携協定の交渉については、農業・酪農に関する関税が撤廃により日本産の農作物や乳製品が圧倒されると予想され、北海道などで反発が相次いでいたが、日本・オーストラリア経済連携協定は、2015年1月発効した。
発効済みの協定(EPAを含む)
日本・シンガポール新時代経済連携協定:2002年11月30日発効(改正議定書2007年9月2日発効)
日本・メキシコ経済連携協定:2005年4月1日発効(改正議定書2012年4月1日発効)
日本・マレーシア経済連携協定:2006年7月13日発効
日本・チリ経済連携協定:2007年9月3日発効
日本・タイ経済連携協定:2007年11月1日発効
日本・インドネシア経済連携協定:2008年7月1日発効
日本・ブルネイ経済連携協定:2008年7月31日発効
日本・ASEAN包括的経済連携協定:2008年12月1日より順次発効し、2010年7月1日に最後のフィリピンについて発効し、すべての署名国について発効となった。ただし、インドネシアについては、国内の実施のための手続きが遅れ、インドネシアの財務大臣規定が2018年2月15日に公布され、2018年3月1日より施行されたことにより、2018年3月1日より、協定の運用が開始され、日本とインドネシアとの間ではAJCEP協定に基づく特恵関税率が適用されることになった[24][25]。
日本・フィリピン経済連携協定:2008年12月11日発効
日本・スイス経済連携協定:2009年9月1日発効
日本・ベトナム経済連携協定:2009年10月1日発効
日本・インド経済連携協定:2011年8月1日発効
日本・ペルー経済連携協定:2012年3月1日発効
日本・オーストラリア経済連携協定:2015年1月15日発効
日本・モンゴル経済連携協定:2016年6月7日発効
環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定(CPTPP、TPP11):2018年12月30日に、メキシコ、日本、シンガポール、ニュージーランド、カナダ及びオーストラリアの間で発効[26]。2019年1月14日にベトナムについて発効[27]。残り未締結の4か国(ブルネイ、マレーシア、ペルー及びチリ)はそれぞれの国が批准を通知してから、60日後に個別に、当該国について協定は発効する[28]。
日本・EU経済連携協定:2019年2月1日発効[29]。
日本が締結手続きを完了したが未発効の協定(EPAを含む)
環太平洋パートナーシップ協定(TPP):2016年2月4日署名[30]、日本は2017年1月20日締結。[31]。未発効。
交渉中の協定(EPAを含む)
東アジア地域包括的経済連携(RCEP)- 日本・コロンビア経済連携協定
- 日本・トルコ経済連携協定
- 日中韓自由貿易協定
日ASEAN・EPAの投資サービス交渉(実質合意)
交渉延期中または中断中の協定(EPAを含む)
- 日本・カナダ経済連携協定
- 日韓自由貿易協定
- 日・GCC(湾岸協力理事会)自由貿易協定
学者の見解
経済学者の田中秀臣は「貿易自由化や規制緩和の効果が実際に現れるのは、長いスパンが必要であり、5-10年で見ないと良し悪しは言えない」と指摘している[32]。
ノーベル経済学賞受賞者のジョセフ・E・スティグリッツは「自由貿易協定は『自由』な貿易協定ではない。実際の貿易協定の批准書は何百ページとある。そんな協定は『自由』貿易協定ではなく『管理』貿易協定である。こうした貿易協定は、ある特定の利益団体が恩恵を受けるために発効されるものであり、特定の団体の利益になるように『管理』されているのが普通である。アメリカであればUSTR(アメリカ合衆国通商代表部)が、産業界の中でも特別なグループの利益、とりわけ政治的に重要なグループの利益を代弁している」「二国間の貿易協定が発展途上国に多大な犠牲を払わせている。実際に自分が関わったケースでも、二国間の貿易協定で途上国に大変な犠牲を強いることがよくあった」と指摘している[33]。
スティグリッツは、アメリカ合衆国財務省・IMFの「ワシントン・コンセンサス」が、貿易の自由化・資本の自由化を強制することで、途上国の人々を苦境に陥らせていると指摘している[34]。スティグリッツは「貿易の自由化は経済成長をもたらすとされているが、ひいき目で見てもこの主張を裏づける証拠はない。国際貿易協定が発展途上国を経済成長に導けなかった一因にバランスの欠如がある。先進国には裁量的な関税率が認められる一方で、途上国には平均して4倍の関税率を設けてきた。また、途上国が国内産業への補助金を撤廃させられた一方で、先進国は巨額の農業の補助金が認められてきた」と指摘している[35]。スティグリッツは、独占・寡占の弊害を防ぐための競争政策を提案している[36]。
ノーベル経済学賞受賞者のポール・クルーグマンは、国際貿易に無知な人ほど自由貿易の効力に幻想を抱きがちであると述べており、自由貿易が経済にポジティブに作用するかのような神話がつくられやすい傾向があるが、貿易を専門とする経済学者はそのような仰々しい見解(grandiose view)を自由貿易に抱いているわけではない。また、一般論として、輸出増で増えた分の雇用が輸入増での雇用減によって相殺されてしまうため、自由貿易は雇用創出をもたらさないとしている[37]。
法学者の楢崎みどりは「自国政府に不信を感じている勢力は、政府が外国政府との間で国家間関係を緊密化する代償として、国内産業を差し出すような条約を結ぶことを恐れている。この立場にとっては、国家主権とはその国の自立・自己決定権を意味し、自国の政府を国家主権の体現者としては相応しくないと見なすこともある。企業対国家の仲裁手続を認めている自由貿易協定が立法権を侵害するという主張は、必要な制度の策定を政府が自粛する可能性を恐れているといえる。自由貿易協定の交渉を行う際には、政府は国内でこれまでの産業保護の政策や立法を変えるための取り組みを始めなければならない」と指摘している[38]。
北米自由貿易協定
経済学者のディーン・ベーカー[39]は、近年[いつ?]の自由貿易協定は一般労働者の労働条件を向上させるものではないと論じる。現実には自由貿易協定は、多くの経済学者が理想として描くものとは大きくかけ離れているとベーカーは述べる。例えば北米自由貿易協定(NAFTA)とその後続協定は、それらの協定がアウトソーシングを容易にするものだったために、労働者の賃金を下げる性格を有する協約だったからである。NAFTAによって米国の鉄鋼所職工や自動車製造労働者が、発展途上国の低賃金労働者との競争にさらされ、その結果米国の製造業労働者の賃金低下を招いた。NAFTAなどの協定は、大企業がその国の民主的プロセスを握りつぶすために使う道具であるとベーカーは論じる。環境保護、安全、健康などについての基準は民主的に選ばれた政権によって規制がかけられる。大企業は、NAFTAその他の協定を利用してそれらの規制を妨害することができる。環太平洋戦略的経済連携協定でも同じことが起こるとベーカーは述べる。米国では、とある特許政策のために、抑制されないほどの独占が数十年間も製薬会社に与えられていた[39]。米国民は、米国以外の先進国(それら先進国では、製薬会社による市場独占をある程度制限している。)での価格の2倍の価格で処方薬剤を購入している。
ジョセフ・E・スティグリッツは「発効から10年以上を経て、NAFTAの失敗は既成事実となっている[40]」「NAFTA成立から10年間で、アメリカ・メキシコ両国間の所得格差は10%以上広がり、メキシコ経済を急成長させるという結果ももたらさなかった。メキシコの10年間の経済成長率は、実質で一人当たりの国民所得で1.8%に過ぎなかった。また、NAFTAはメキシコの貧困を悪化させた一因となった。NAFTAは関税を撤廃させた一方で、非関税障壁が丸ごと存続された[41]」「関税にとらわれ過ぎた結果、メキシコは競争力強化に必要な措置をおろそかにしてしまった[42]」と指摘している。
ポール・クルーグマンは「NAFTA成立を貿易ブロック化に向かう大きな流れの一環と見るのは間違いである。なにが脅威となるかというと、それは時代錯誤の保護主義、狭小で利己的な保護主義であると指摘している[43]。クルーグマンは「貿易によって雇用がどれだけ増えるか、或いは減るかといった問題の立て方そのものが、アメリカ経済の仕組みを誤解している。NAFTAが雇用にどのような影響を与えようと他の経済政策、特に金融政策によって必ず相殺できるという事実が見落とされている[44]」「理論的には、NAFTAはアメリカの非熟練労働者に悪影響を与えることは認めざるをえないが、影響はきわめて小さいと考えるのが妥当である。NAFTAによるアメリカの雇用・環境面のコストは小さいものである[45]」と指摘している。
クルーグマンは「アメリカは対ヨーロッパ諸国よりもはるかにカナダ・メキシコとの貿易量が多いが、NAFTAを結んでいるからだけではない。NAFTAが締結される以前からアメリカ・カナダ・メキシコの貿易は非常に盛んであった。むしろ、貿易が盛んだったからこそNAFTAを締結する意味があったと言える。従来から非常に強力な貿易関係があったから、NAFTAを締結するのが必然的だったと言えるわけである[46]」「一般論で言えば、地域貿易協定は、確固たる貿易関係がある場合、非常に大きな意味をなす。例えばNAFTAは、基本的にしっかりした貿易関係があったため、意味があった[47]」と指摘している。
経済学者の八代尚宏は「NAFTAについて、カナダの企業がアメリカの企業に買収されたとか言われているが、NAFTAで最大の利益を得たのはカナダ経済である。それは、カナダが広大なアメリカ市場に対して、輸出を拡大できたからである」と指摘している[48]。
スティーヴン・ランズバーグは「NAFTAを批判したロス・ペローは、アメリカの賃金・雇用が低下するという推計を持ち出した。それは、協定によって消費者物価は下がり、手に入る商品の種類が豊富になるという推計である。協定のおかげで、アメリカ人が労働を減らし消費を増やすことができれば、アメリカ人の勝ちなのである」と指摘している[49]。
脚注・参考資料
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^ 第22回「自由貿易協定(FTA)の効果」RIETI 2014年4月15日
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^ List of all RTAs, including accessions to RTAs WTO HP
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^ スティーヴン・ランズバーグ 『ランチタイムの経済学-日常生活の謎をやさしく解き明かす』 日本経済新聞社〈日経ビジネス人文庫〉、2004年、83頁。
関連項目
- EU-ACP経済連携協定
- United States free trade agreements
- European Union free trade agreements
- Euro-Mediterranean free trade area
- Free trade areas in Europe
- Free trade zone
- 貿易
外部リンク
- 外務省(FTA/EPA)
- 外務省(日本のFTA戦略)
- 日本貿易振興機構
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