テニスコート
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テニスコートは、テニスを行うためのコートである。
大きさは 縦23.77m=78ft、シングルスでは横8.23m=27ft、ダブルスでは 横10.97m=36ft。表面に用いられる素材は様々で、ハード、クレー、グラス、砂入り人工芝の4種類に大別される。上記4種はボールの弾み方や足の滑りやすさといった性質に差があり、それぞれに最適なプレイスタイルが存在する。これらの要因がテニス競技者における選手の個性を育み、その個性がテニス競技そのものに多様性をもたらしている。
目次
1 ハードコート (hard court)
2 クレーコート (clay court)
3 グラスコート (grass court)
4 屋内コート (indoor court)
5 砂入り人工芝コート
6 脚注
ハードコート (hard court)
セメントやアスファルトを基礎にして、多くの場合合成樹脂などでコーティングされて造られる。クレーコート(下記記載)に比べボールが速くなるため、速いサーブおよびストローク、優れたボレー技術を持つ選手に有利である。一方、ソフトテニスでは摩擦が大きく、ボールがバウンドした後に減速するため、強打主体の選手には不利となる。また、その摩擦の大きさを利用したカットサーブが有効になる。
バウンドが安定してイレギュラーがほとんどないので、サーブ、リターンにストロークにボレーと、選手は様々な技術をうまく発揮できてプレーしやすい[1][要ページ番号]。
4大大会においては、全豪オープンでは1987年より、全米オープンでは1978年より採用されている。全米オープンのコートの方が全豪オープンより球足が速くなっている。
ハードコートでのプレーは選手の身体に与える衝撃が大きく、ハードコート用とされるテニスシューズは他のコートで使用するために作られたものに比べ、底が厚くなっている。
ハードといっても様々で、オーストラリアは触れればヘコむほど柔らかいサーフェスが多い一方、アメリカは球が伸びる硬いサーフェスが多い。表面の摩擦係数でもボールの伸びが変わるので大会ごとの対応が必要になるが、どちらかと言うと実力通りの結果が出ることが多く、番狂わせは少ない傾向にある[1][要ページ番号]。
ハードコートは、他のコートに比べると比較的維持・管理に手間が掛からない。そのため、最近はレジャー施設にテニスコートを設置する際、ハードコートを採用する場合が最も多くなっている。
日本テニスの中心たる有明コロシアムは、ハードコートに多少のしなやかさを持たせたセミハードコートを採用している。
クレーコート (clay court)
いわゆる"土=clay"と指すように、土質材料を固めた地面に砂を撒いたサーフェスのことである。使われる材料は様々で、日本では学校の校庭でよく見られる粘土質の地面に真砂土を撒いたイエロークレーが一般的である。世界各国で開かれる主要な国際テニス競技大会では日本と事情が異なり、アンツーカを使ったレッドクレーを採用している大会が多い。とりわけ有名なのが四大大会の全仏オープンである。一方、アメリカでは変成岩を砕いて敷いたグリーンクレイの"Har Tru"をよく目にする。四大国際大会の1つである全米オープンが、1975年から1977年にかけてグリーンクレーを採用していた。
2012年のマドリード・マスターズではブルークレーを採用したが、選手から滑りやすいと批判を受け、翌年からはレッドクレーに戻している。
クレーコートは足がスライドしやすく、特有のフットワーク技術を要求される。また、一般的にはロングラリー戦になりやすいため、総じてグラウンド・ストロークとフットワークが得意な競技者に最適なコート・サーフェスとされる。プロ選手で例を挙げるとラファエル・ナダルがその代表格である。
ハードコートに比べると球足が遅くなる一方、バウンドが高く弾む。それによりポジショニングが下がり目となるのでストロークやフットワーク優れるタイプが有利になる。ハードや芝に比べてショットが決まらないケースが増えてラリーが長くなり、より緻密な組み立てが必要になるうえ、他と比べて体力が必要となる[1][要ページ番号]。
スペインなどのヨーロッパや南米にはクレー育ちのスペシャリストが多くいる。ランキング下位の選手が大活躍する番狂わせが多い[1][要ページ番号]。
グラスコート (grass court)
グラスコートは最も速いコートである。ゴルフのグリーンと同様の芝を敷き詰めたコートであり、芝の健康状態、手入れ、消耗などのコンディションがプレーにも影響する。グラスコートは、他のどのコートよりも弾道が低く、速い。球がバウンドする時、不規則になるので(これをイレギュラー・バウンドという)どちらかというとサーブ・アンド・ボレーのプレースタイルに有利である。最も有名なグラスコートは、ウィンブルドンのセンターコートである。以前は全豪オープンや全米オープンも芝生で行われていた。芝生コートを最も得意とした選手は、ジョン・マッケンローやマルチナ・ナブラチロワ、ピート・サンプラス、ロジャー・フェデラー、ビーナス・ウィリアムズなどが知られている。日本国内ではグラスコート佐賀テニスクラブで採用されており、かつては「ウィンブルドン九州」の名称であった。
ボールのバウンドが低くて滑るので、攻撃的なテニスが有利となる。ストロークが得意な選手が落ち着いてプレーできず、ビッグサーブを持つ選手が番狂わせを起こすことも多い[1][要ページ番号]。
芝を用いているため、頻繁な水撒きや芝刈りなどの手入れが必要であり、他の種類のコートより維持費がかかる。よって、現在では採用例は激減した。年間では6月下旬に始まるウィンブルドン選手権とその前哨戦、及びウィンブルドン選手権の翌週に行われるテニス殿堂選手権(Hall of Fame Championships)のわずかに7大会しか行われない。世界的に芝のコートが少なく練習もできないので、実戦の経験が重要となる[1][要ページ番号]。
屋内コート (indoor court)
木材、セメント、カーペット、人工芝などの床面を持った屋内のコート。ソフトテニスの代表的なインドア大会であるSHOWACUP東京インドア全日本ソフトテニス大会(東京インドア)、全日本インドア選手権大会はフローリング、つまり木材によるサーフェスで開催されている。硬式テニスの「東レ パン・パシフィック・オープン・テニストーナメント」では東レ製の人工芝を採用しており、東京インドアと東レはともに東京体育館で開催されていた(東レは2008年より有明にて開催)。このようにソフトテニスでは木材質が、硬式ではカーペットが敷かれることが多い。木材質ではソフトテニスではハードコートと同様にバウンドが止まるが、硬式テニスでは滑るようになり、おそらく芝を超えて最速のサーフェースになる。ウィンブルドン対策にこの板張コートで練習するプロがかつていたことは、あまり知られていない。
テニス・シーズンでは、1月の全豪オープンは南半球のオーストラリアのハードコートで行われるが、それが終了すると北半球に移り、2月は世界各地の室内コートに戦いの場が移る。島津全日本室内テニス選手権大会は3月に開催され、それから9月に4大大会年間最終戦の全米オープンを終えた後、寒くなる10月から年間ツアー最終戦までは屋内コートで一連の試合が行われる。ソフトテニスにおいても、11月の日本リーグからがインドアシーズンで4月の全日本女子選抜が最終戦である。ソフトテニスにおけるおもなインドア大会には日本リーグ、全日本学生インドア、YONEXCUP国際札幌大会(HTB杯国際札幌インドア)、全日本社会人・学生対抗インドアソフトテニス大会、SHOWACUP東京インドア全日本ソフトテニス大会、全国招待宮崎正月インドア(宮崎インドア)、全日本インドア選手権大会、国際ソフトテニス熊本大会(かつての全日本選抜ソフトテニス熊本大会、通称「熊本インドア」)、全日本女子選抜ソフトテニス大会(以上開催順)などがある。そのなかでも最もビッグで権威のあるのが、2月の第1週に大阪市中央体育館で開催される全日本インドア選手権大会である(その数週間前に開催されるSHOWACUP東京インドア全日本ソフトテニス大会の通称「東京インドア」に対して、「大阪インドア」とも呼ばれる)。
砂入り人工芝コート
日本とオーストラリア(2000年代以降協会の指導もありその数を減らしている)、ニュージーランドにおいて広く普及しているコート。その他の地域ではかなり稀なサーフェスである。住友ゴム工業/住友ゴム産業のオムニ・コートの他に、東レのスパックサンド、三菱化成のダイヤサンドなどがある。人工芝に砂をまき、適度に摩擦を軽減している。1990年代に急速に普及し、日本における公営コートはほとんどこの砂入り人工芝となった。
クレーコートに近い使用感というのが売りだが、ベースはハードコートであり、最も疲労感が強い。球足は硬式テニスではハードより遅く弾まない。ソフトテニスではクレーより遅く、弾道は少々低め。天候に左右されないという点においては他のサーフェスを圧倒しており、真の意味での全天候(オールウェザー)コートといえる。雨の多い日本において、頭痛の種だった大会運営の負担が飛躍的に軽減された。また、硬式テニスとソフトテニスの共存が日本のテニスにおける特異な事情だが、その妥協点としての存在でもある(硬式プレーヤーはハードを好み、ソフトテニスプレーヤーはクレーを好む傾向にあり、しばしば対立する)。ただし、ソフトテニス専用のクレーコート・砂入り人工芝コートも存在する。砂入り人工芝は、その滑りやすさ、及び引っかかり易さから怪我も多く、日本以外では砂入り人工芝コートで行われる硬式テニスの公式戦はほぼ皆無であることからジュニア育成の障壁ともなる。さらに使用済みの人工芝は産業廃棄物となり、世界の潮流と逆行している。硬式テニスのジュニア育成に力を注いでいる組織はこれらの問題点を強く意識しており、環境面からもジュニアの底上げを図っている。実際、テニスの名門であり数多のプロが輩出した湘南工科大学附属高等学校や柳川高等学校、園田学園中学校・高等学校、慶應義塾大学、早稲田大学、亜細亜大学、荏原湘南スポーツセンター、桜田倶楽部のテニスコートの約8割はハードコートであり、さらに1割強がクレーコートで、砂入り人工芝コートの割合は残る1割未満を構成するのみである。
脚注
- ^ abcdef『Number』869号(2015年1月22日号)