ジャガー・XJR-15
ジャガー・XJR-15は、1990年から1992年にかけて、トム・ウォーキンショー・レーシング(TWR)がジャガーブランドで開発・製造したスポーツカー。最終生産台数は53台[1]。
概要
元々はTWRがF1のサポートレースとして、ポルシェ車による「ポルシェカップ」に類するジャガー車によるワンメイクレースを企画し、そのレース用の車として当初50台限定の予定で開発されたという経緯を持つ。そのため公道走行が可能なスポーツカーでありながら、本来ジャガーの純レーシングカーに与えられる「XJR」の型番が付けられる車となった。ベース車には当時世界スポーツプロトタイプカー選手権(WSPC)やル・マン24時間レース等に参戦していたXJR-9が選ばれ[2]、フレームやサスペンションなどはXJR-9と共通となっている[3]。デザイナーもXJR-9と同じトニー・サウスゲートが務めた[1]。
オリジナルは6L V12・SOHCエンジンを搭載し、450馬力を発生する。これもIMSAシリーズに参戦していたXJR-9用のエンジンをデチューンしたもので、チューニング次第では700馬力まで出力を上げることも可能だったという[3]。1991年には実際にXJR-15によるワンメイクレースがモナコグランプリ、イギリスグランプリ、ベルギーグランプリと3戦開催された。
その高い性能は、ほぼ同時期にジャガーが発売したXJ220と比較され、XJ220がV6 ツインターボエンジンを搭載したのに対し、こちらはV12エンジンを搭載したことからマニアの人気を集めた。また当初より市販車として開発されたXJ220に対し、XJR-15はその成り立ちから純レーシングカー並みの高い性能を持ちながらも公道走行が可能だったため、フラッグシップスポーツカーとしてXJ220をプッシュしたかったジャガーの思惑とは裏腹にXJR-15が実質的なフラッグシップの地位を占めてしまった。そのため、販売面だけで言えば結果的にXJ220の足を引っ張る存在となった。実際TWRとジャガーは本車の販売終了と時を同じくして関係解消に至っており、徳大寺有恒は「(レーシングカー同様の車を)トムは売ってしまったので(ジャガーの)逆鱗に触れたんだろう」と指摘している[3]。
ただ乗用車として考えた場合の居住性能は悪く、走行中でもドライバーの顔面を熱風が襲い、100km/h以下の低速だとラジエターの水温がすぐに110℃を超えるという[2]。車内にはヘッドホンタイプのレシーバーが装備されているが、これも車内の騒音がひどいため、レシーバーがないと会話すらままならないためである[3]。
後にXJR-15 LMと呼ばれるエボリューションモデルも開発された。こちらはエンジンがXJR-12に搭載されていたエンジンの発展形である7.4L V12に変更され、出力も760馬力まで向上している。
日本には少なくとも1台が並行輸入され、CAR GRAPHIC1991年9月号において笹目二朗による試乗記が掲載された。また2007年には日本国内のblogにて、LMバージョンの同乗記が掲載された。2017年現在、LMバージョンとして生産された全5台が日本国内に存在するという[2]。
備考
1997年には、日産自動車とNISMOがTWRと共同で、ル・マン24時間レース参戦用の車として日産・R390を開発した際に、XJR-15がベース車種となったと伝えられている[3]。
また、2005年には、東海大学(林義正研究室)がル・マン24時間レース参戦のスタディー・カーを作成したがXJR-15がベースにされていると言う。
脚注
- ^ ab公道走行も可能なワンメイクレースカー ジャガー XJR-15 - carnny・2016年12月14日
- ^ abc「乗るべしスーパーカー」発売記念連載03『ジャガーXJR-15』 - オートスポーツ・2017年9月6日
- ^ abcdeレーシングカーさながらのスペックと製造方法’91 JAGUAR XJR-15 - カーセンサー・2015年11月10日